投稿日:2023年11月10日

ラーメン店Tsurumen Davisの店主大西益央氏が語る、アメリカのラーメン事情


アメリカで価値が急上昇 ジャパニーズラーメン

ここ数年、ニューヨークなどでは日本の有名ラーメンチェーン店が出店し、アメリカでも認知が広まっている日本のラーメン。今なぜそこまでアメリカでジャパニーズラーメンがブランディング化され評価されているのか。ラーメン店Tsurumen Davisの店主大西益央氏に話を聞いた。

元々大阪で10年ほどラーメン屋をされていた大西氏。今から約10年前にアメリカに移住し、現在ボストンでラーメン屋を経営している。
「ラーメン屋さんとして、そういうビジネス的な観点とは全然関係なく、ただただ小さい時からアメリカに住むっていう、どちらかと言うと個人的な夢でした。ラーメンが今から伸びる市場とか、そういう観点ではなかったですね」と話す。
最初の店は、日本に1番近いアメリカということでハワイにお店を出店。その時は、ハワイと日本を行き来しながら、日本の店もやっていたという。
しかし、2店舗ほど経営していたハワイの店は上手くいかなかった。いろいろと海外の洗礼を受け2年ぐらいで諦めることになってしまったが、再度アメリカ本土でチャレンジしたいと考え、次はノースキャロライナへ。そこでお店をパートナーと一緒にオープンしたにも関わらず、上手くいかなかった。後悔が残ったことからもう1回チャレンジしようと、最終的にボストンを選んだそうだ。
2018年、ボストンで開業したラーメン屋は「終わりを決めないとどこでジャッジするか難しく、全力で走りきれない。1000日だけは毎日店に立とう」と考え、1000日限定で閉めると決めてスタート。「本当にこれでもう失敗したら日本に帰ろうと思っていた」と当時を振り返る。
しかし、なぜか初日から行列ができていた。
「自分の覚悟が変わったら周りも影響したのではないかと。あともう1つの要因は、ボストンは寒い地域で、ラーメンという温かい食べ物がよかったのかもしれません。また、ボストンはダイバーシティでいろんな文化を受け入れる街で、トラディショナルな日本そのもの、例えば出汁文化を持ってきても理解してくれる人が多かったことから、最初からすごく喜ばれました。色んな味覚を楽しみたい方が多いように感じます。いろいろな要素が絡んで上手くいったのかなと思っています」と、ボストンで受け入れられた理由を話した。

今日本のラーメンがアメリカで25ドル、日本円で言うと3600円ぐらいで販売されている。「ラーメンの評価のされ方、食のポジションが日本と少し違うかなと思っています。分かりやすく言うなら、若いカップルが初デートとかでもラーメン食べに行こうぜみたいな、ちょっとクールな感じです」。
アメリカでは、ラーメン屋にソムリエがおり、ワインやシャンパンを置いているお店もあるほど、ブランド化されているそうだ。主流になりつつあるのは、“Bar+Ramen” 。日本は並んで席を待つところが、アメリカではウェイティングバーがあり、そこでカクテルなどを飲みながら席を待つスタイルも増えてきているという。「ラーメンプラスお酒っていう業態が日本ではまずそのビジネスモデルって意外とだめで、どちらかと言うとラーメンはサッと食べてもらう回転を重視するビジネスモデルなのですが、アメリカでは客単価ビジネスモデルで、ひとり50~60ドルほどになっている」そうで、ゆったり味わうスタイルだそうだ。
また、寿司とラーメンは日本食として別格で人気がある。「記念日であったり、最初のデートとかにも使ったりするので、そもそも日本よりも評価されている。日本のクオリティの高いラーメン自体が日本ではちょっと安すぎるという可能性もある。日本はどちらかと言うと庶民の味方みたいないい面はありますが、そういった意味で多少ファストフードよりも高くても受け入れてくれるのではないかと思います」と説明する。
オープン当初から日本の倍ぐらいの価格で提供していたが、さらにインフレも進み、この1年でどんどん上がっていっているという。
「この10年で、日本にはたくさんラーメン屋ができたことで価格競争もあるなか、ものすごくレベルが上がっている。それなのに、ちょっと価格は抑えられてしまっている。海外に行ったらこの素晴らしいラーメンはもっと評価されるから、僕はもっとどんどん若いラーメン職人や、ラーメンだけに限らず日本の素晴らしい食文化を伝えられる料理人が海外にもっと出ていってもらいたいなって思っています」と語る。海外に出たからこそ、改めてこの日本の文化の価値が分かることもあるかもしれない。
アメリカではこってり系の豚骨ラーメンが20年ほど人気だったが、今ブレイクしているラーメンは、あっさり系の透き通ったスープの鶏の醤油ラーメンだそうだ。

「全米ラーメン王に俺はなる」

「アメリカで1番影響力のあるラーメン職人になりたい」と夢を語る。現在アメリカで影響力のあるラーメン職人は、韓国系アメリカ人のシェフ兼実業家のデイビッド・チャン氏、日本でラーメン屋を営んでいたアイバン・オーキン氏などが挙げられる。
「日本のラーメンの良さを伝えていけるポジションになりたいという意味で、そういう目標、夢を掲げています」と話した。

Tsurumenのラーメンとしてプロデュースしたグルテンフリー

GF(グルテンフリー)とは、小麦粉に含まれる2種類のたんぱく質が水を加えてこねることで、生まれる成分「グルテン」を含まない食品を摂取する食生活のことである。元々グルテンを摂取することで体に不調が起きる、セリアック病の食事療法として始まったものだという。

アメリカではGFは当たり前となり、グルテンフリーのコーナーがどこのスーパーにもあるそうだ。「だいたいどこのレストランに入っても、グルテンフリーとビーガンはメニューにあるため、お店で毎日のようにグルテンフリーメニューはありますかと聞かれました。それでいろいろと調べて、グルテンフリーについては今後需要があるからやっていかないといけないなと思い、日本の米粉カンパニーであるケンミン食品さんと一緒に開発しました」と、プロデュースした経緯を話す。
日本の食文化「ラーメン」を通して、「おいしく、健康的な生活を送れる方を応援したい」という思いを実現するため、大西氏とケンミン食品は、グルテンフリーラーメンを提供するブランド「GF RAMEN LAB」を立ち上げた。
ケンミン食品が、大西氏の思いを具現化するため、「全ての人が安心しておいしく食べられるラーメン」として、「黄金の鶏油(チーユ)しょうゆラーメン」「鶏清湯のすっきり柚子塩ラーメン」を共同開発し発売。同ラーメンは、通販サイト「GF RAMEN LAB」で購入可能だ。
このほか、一部の乾めんタイプの「グルテンフリー中華麺(中太麺)」を通販およびスーパーなどで販売している。
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●グルテンフリーについてはビーフン・ラボのページをご確認ください。

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