名波 浩さん体験記

聞き手:論スポ編集長 本郷 陽一

名波浩さんは、日本が初出場を果たした98年のフランスワールドカップで司令塔として栄光の背番号「10」を背負った“ファンタジスタ”である。
その左足は「魔法の左足」と呼ばれた。的確なパスは空中からピッチを見ているのではとさえ言われたセンス。

ジュビロ磐田の黄金時代を支え、セリエAのベネチアでもプレー。日本代表として国際Aマッチに67試合出場。今年1月に行われた引退試合には、三浦和良選手や中田英寿氏らの錚々たる仲間が駆けつけた。

現在、解説者、指導者として活躍中の名波浩さんにビーフンメニューを試食していただき、サッカー選手と「食」について話を聞いた。

――サッカー選手にとっても《食》は大事な要素でしょうか。

名波さん 「もちろんです。サッカー選手にとっては体重のコントロールが非常に大事です。1シーズンを戦い抜く体力を作るには、ある程度の体重は必要ですし、体脂肪が多いと膝や足首など関節に負担がかかり故障発生の原因にもなります。体脂肪を落としながら筋量をキープしたいんです。そこが苦労する部分。そして持久力も保たねばならない。そういうコンディション作りには食が深く関係しています」

――名波さんの場合、どういう《食》のサイクルでしたか。

名波さん 「試合後は焼き肉でもステーキでもいいんですが、試合前は、油っこいものは避けて消化のいいものを摂取する。僕は、22歳から24歳の頃は、当日の試合前は、うどんと決めていました。腹持ちもいいですし炭水化物はエネルギーに変わります。それと心がけたのは、過剰摂取をなるべくしないということです。次の日にまで胃に残る感じを残さないように気にかけました。一食、一食、満腹ではなく100%を60%くらいに抑えておき補食として夜食をとるなどの食のリズムを考えていました」

――どういう経緯で《食》を意識されるようになりましたか?

名波さん 「小学校時代は肉類中心の食事でした。“ジャイアン”というあだ名で呼ばれるほどの肥満児でしたが、肉類中心の食事から野菜類中心の食生活に変えてから小学校5年生になる頃にみるみる細くなったんです。母親からは、いつも『野菜をとりなさい』と言われていました。自分でも『こんなに細い体では戦えない。強い体を作らねば』と野菜を肉と同じ感覚で摂取するように自覚しました。清水商高には越境入学で下宿生活をしましたが、食事は、近くの旅館でバランスのいい食事を食べさせてもらっていました。そこでは厨房に入って料理を作るのを見学していました。今後、大学、社会人へ進めば一人暮らしをすることになると考えていたので、ここで料理を覚えて自炊ができれば鬼に金棒と思っていたんです。ただ、僕はコーラやお菓子が大好きなんです。過剰摂取。絶対によくないことですね」

――意外です。名波さんと言えばストイックなイメージがありました。

名波さん 「ジュビロ磐田に入団した1年目は、年間の試合出場数が60試合を超えたハードなシーズンで体重が64㌔台まで減ったんです。それが、今度は逆にセリエAでプレーしたベネチア時代には、体脂肪が驚くほど増えてしまいました。食事は、全部イタ飯です。メニューはほぼ一緒でトマト系、クリーム系、シンプルに炒めたビヤンコの3種類のパスタのローテーション。試合当日は、トマト系かビヤンコかのどっちか。肉類も鶏肉のみでしたね。夜は普通にステーキも出るんですが。とろとろのマッシュポテトが、本当に美味しかったので山盛り食べていました。そういう生活を1年続けていたおかげで日本に戻った時は、体重が2、3㌔増えて、7.6%だった体脂肪が15%になってしまっていました」

――それは大変ですね。

名波さん 「困りました。そこから体脂肪との闘いです。栄養士と相談しながら徹底した食事コントロールをしました。コーラ、お菓子は、やめて飲み物は水かお茶。子供の誕生日でもケーキを我慢します。例え酒席に呼ばれても酒も飲みません。油ものも極力控えて、体重はキープして脂肪だけを落としていく作業です。当然、筋トレも週2回に増やしました。体脂肪は減って11-12%をいったりきたりでしたが、2001年に膝を痛めて、また16%に戻りましたね。引退しようと決めた半年前に、もう一度、ストイックにやって9.1%までになりました」

――他の選手の方々も《食》への意識は高いのですか?

名波さん 「一流と呼ばれる選手はとくに食事に気を使っています。食事をすべて写真に撮影してコントロールする選手もいます。中山雅史さんは常に5%以内に体脂肪を抑えていましたね。今回日本代表メンバーに選ばれた川口能活選手はGKなのに体脂肪は5%以下です。食事には凄く気を使っていて100㌘単位での体重の増減にまで神経を使っていました。そういう選手は現役で長くプレーしていますし成功します」

――ケンミンのビーフンは米100%で作られています。油処理は一切行っていないノンフライ麺で、食品添加物無添加、食塩も使っていません。ご飯を食べるのと一緒なんですが、GI値が低く、体脂肪がつきにくい食材なんですよ。

名波さん 「米でできているから、お腹に溜まった感じがするんですね。それで体脂肪がつきにくいなら理想の炭水化物かもしれません。僕も現役時代に、そういうことを知っていたらビーフンを食べていましたよ(笑)。世の中のアスリートが、そういう特徴をもった食材であることを広く知ったら、間違いなく、ご飯、うどんなどのパスタ類に続く第3の炭水化物のレパートリーに入ってきますね」

――今回4つのメニューを試食していだきました。

名波さん 「ニューヨークに住んでいる妻のお母さんが、よくビーフンを使ったメニューを作ってくれます。今日は4つのメニューをいただきましたが、どれも美味しかったですね。あんかけビーフンは動植物タンパク質をうまく摂取できる形になっていますし、デザートで鉄分をうまくとれるのもいいアイデアです。特に僕は、このビーフン生春巻きが好きです。梅(クエン酸)を使ったタレが一層、味覚を引き立てています」

――現在は、子供たちにもサッカー指導をされていますね。そういう子供たちの食生活についてのアドバイスはありますか?

名波さん 「2泊3日で、子供たちとキャンプに行くんですが、ビュフェスタイルの朝食会場で様子を見ていると好き嫌いが多くて極端に量が少なかったり逆に食べることもできないのに山盛りに皿にとる子供がいたりバランスが悪い。パンしか食べない子がいるなど偏りが目につきます。バランスの良い朝食は大事です。朝に食べるとパワーが出ます」

――「食育」が現在とても重要とされています。特に将来、アスリートを目指す子供はなおさらだと思います。

名波さん 「子供に『ロングボールを蹴るにはどうすればいいですか』とよく質問を受けます。12歳くらまではメッシも蹴れなかった。13、14歳で筋力がつくと自然と蹴れるようになってきます。つまり骨格や筋肉が付き始めて体ができてくるという年代ですね。そういう体作りには、食は重要な意味を持ってきます。好き嫌い無くバランスを考え、朝食をしっかりとる。ご両親の役割も大きいでしょう。こういうビーフンのレシピは、体作りを意識する助けになりますね」

――最後になりましたが、南アフリカで4年に一度の祭典ワールドカップが始まります。

名波さん 「ワールドカップは、4年に一度の試合ですからテンションが上がります。日本代表が苦しんでいるさまを見ると代表OBとしてもプライドを持って戦って欲しいという気持ちが強くなります。僕も、テレビの解説で現地に行きますが、そういう気持ちを持って乗り込みたいと考えています」